2007 Chicago Marathon - 30th anniversary

あのマラソンから2週間が経ち、シカゴの街は、長い冬眠に備え今ぞとばかりに外出する人達、ハロウィーンで飾りつけられた店でにぎわう。Lincoln Parkも紅葉となり、ランニングの風景が変わる。毎週末のグループランニングも終わり、朝早く起きて何10kmをあたかも当たり前かのように走ることは、もうない。42.195kmという長距離を走り、ダメージを受けた両足の人差し指の爪の今後の行く末を少し気にしながらも、またすぐにでも走り始めたい気持ちがこみ上げる。
そんなポストマラソンシンドロームの中、ふと考えた。このマラソンが持たらしてくれたものとは、いったい何だったのであろうかと。
それは大きく3つ。まったくもってその通りの「健康」、何となくそうなるであろうと分っていた「自信」、そして個人克服的スポーツからは意外な「共有」であった。
まずは健康。
最初に思いつくことは、日々の食事がとてもおいしくなったことである。毎週ランニングを通して約1500kcalから3000kcalを消費する生活が約10ヶ月続いた。食事の時間になったから潜在的にお腹がすく訳ではなく、エネルギーを消費したからお腹がすく。体が食べ物を求める。そんな感覚は、子供の時運動場で思いっきり遊んだ時以来感じたことがなかったのではないだろうか。
そんな食欲が続いた10ヶ月、身体測定記録はどうであろうか。
今年1月14日、トレーニングを初めて2週間目の記録:
体重68.4kg 体脂肪率18.0% 体年齢34歳 BMI24.2
骨格筋率34.4% 内蔵脂肪レベル8.0 皮下脂肪率11.5%
9月23日、トレーニングを初めて約10ヶ月目の記録:
体重66.0kg 体脂肪率15.8% 体年齢31歳 BMI23.4
骨格筋率35.3% 内蔵脂肪レベル7.0 皮下脂肪率10.1%
雑誌で特集されるような「2週間で体重が5kg落ちる!」という成果ではない。当初の目標体重値59.9kgからもほど遠い。しかし、全体的に脂肪がしっかりと燃焼されながら筋力が発達し、結果的に対年齢が3歳若返った。おいしい食事を好きなだけしても、トレーニングによって体がどんどん改善される。マラソントレーニングとはそういうものであろうと思う。残念ながら、まだ実年齢30歳の体に到達してはいない。東京生活時代に続けた不摂生の代償の大きさをあらためて実感する。
次に自信。
未知の経験を達成した時に得ることができる発見とその自信というものは、大人になればなるほど少なくなる。子供の頃、内緒でとなりの市まで自転車をこいでいき、色々な新しい街並を発見する。初めて海外に行って異文化を経験する。それらの経験から得られる、未知を知る自信は、とても大きい財産となってきた。今回のマラソンも、その未知の経験に対する挑戦であった。その未知を知るためのトレーニング、そしてとうとう未知を体験するマラソン当日。知ったからこそ得られる確かな自信。これは今後生涯の財産となるであろう。
また、運動に対する自信もついた。トレーニングを始める前は、2kmを歩くこと、オフィスの階段を使用することが、運動であった。自分の足で何百kmとトレーニングを重ねるうちに、20km走ることが可能になった。20kmを走った後の、ゴルフ、テニスが、週末の習慣になった。この距離感は、今まで持ったことのない尺度となり、運動の定義が大きく変えた。
最後に共有。
マラソンは、自分でペースを設定しそれを管理、克服することで目標を達成する、あくまでも克服的個人スポーツである。ただ、その過程においては意外にも共有できる物事が多数存在した。
まずはトレーニング。マラソンのトレーニングを本格的に始めるために16週間のグループトレーニングプログラムに参加した。そのトレーニングには、同じくマラソンを目標にする人達が参加している。それを通した出会い、毎週新たな距離を伸ばすモチベーション、様々な情報の全てがマラソン完走を支える要因となった。
また、ブログやメールを通して日本でトレーニングを続けるまめさん、K、グループこそ違えど、同じプログラムに参加した同僚Oさんと、トレーニングや体のコンディションを共有することで、どことなくお互い支えあい、最後のゴールラインを皆で踏むことができた。
マラソン当日は、スタートラインからゴールラインまで一寸も途切れること無くシカゴの人々、そしてelやNb、JやOs、DvやJ.J.が応援をしてくれた。日本では家族がインターネットで皆のチップタイムをリアルタイムで見ながら応援してくれた。そんな支えをくれた皆は、ただ一方的に応援してくれただけでなく、あのとてつもなく長い距離のレースを共有してくれたと思っている。
マラソンを走っている最中に、シカゴ南部にある貧困層の人々が住むエリアでかけてもらった、今でも忘れない言葉がある。それは、「You are all winners」(あなた達皆が勝者だ)。どんなペースであろうが、どんなコンディションであろうが、完走しようが、リタイヤしようが、今日この日、ここでレースに参加することを決めたあなた達皆が、勝者だ。そんな意味として理解した。その言葉を聞いた時に、タイムやペースを追いかける全ての欲が消え、ただただマラソンを走る自分に強く誇りを感じたことを思い出す。
そんな言葉を共有してくれたシカゴ南部の人達は、決して普段恵まれた生活をしている訳ではない。でも、彼らには勝者を認め、人の努力を尊敬する心を持つ人達であった。普段恵まれた生活をしている自分たちの口からは、なかなか他人に対して言い難い言葉である。
elとNbは来年3月のShamrock Shuffle 8Kに参加することを決めた。早速、elと先週3mile(5km)のランニングをし、来週ランニングシューズを購入する約束をした。
これら「健康」、「自信」、そして「共有」が、マラソンが持たらしてくれた、最も大切なことであると自分は考える。30歳という年齢で、マラソンというスポーツに出会うことができ、心からラッキーであると思う。一生の財産となるであろう。
マラソンを終えた今、既に次を考え始める。今後も好奇心旺盛に未知との遭遇を求めて、それに対し挑戦することは間違いないであろう。今年の挑戦はもう終わり。終わったのである。次が大事なのである、次が。
ヨーロッパで自転車のレースを探し、トレーニングをして参加しようかとも思う。来年10月、どこに住んでいようが、シカゴマラソンをもう一度走りたいという気持ちもある。ゴルフで80をきってみたいと思う。写真やテニスも、もっと上手くなりたいと思う。
この投稿で、今回の2007年シカゴマラソンに挑戦する記録を最後とします。次のチャレンジが決まり次第、このサイトで新たなブログサイトの告知をします。
このブログを読んでくれた皆様、マラソンを応援してくれた皆様、本当にありがとうございました。
RUN RUN RUN! Yoshiamigo, October 2007
